どんとゆけ ★★★

どんとゆけ
ミッドナイトステージ館 演劇はいま NHK BS2
2009年 アトリエグリーンパーク 
作■畑澤聖悟 演出■畑澤聖悟
出演■工藤由佳子、ささきまこと、高坂明生、田中耕一工藤静香

■近未来、裁判員制度のように、被害者の家族が死刑囚の刑を執行する制度が導入され、死刑囚と被害者の家族、刑務官、死刑囚と獄中結婚した妻がちゃぶ台の前に一同に会す。刑務官が死刑執行の方法をマニュアルどおりに説明し始めるが・・・

■先日観た「親の顔が見たい」が鮮烈な傑作だった畑澤聖悟の作演出作。青森の地元で渡辺源四郎商店の公演として上演されたものだ。中継録画としては画質や音質に無理が多く、特に役者の声より観客の笑い声のほうが大きかったりするという、劇場の構造上の問題も絡んでいそうだ。

光市母子殺害事件に取材し、架空の死刑員制度を設定し、死刑制度に関わる者たちがそれぞれの立場から、その歪さを浮かび上がらせる趣向だ。基本的にコミカルな味付けが施されているが、最後に死刑が執行されることは想像がつくので、息詰まる厭な空気が密度を増してゆく。ちょうど「休暇」という映画に似ている。

■死刑執行に携わった刑務官が生まれてくる子供が五体満足であることを祈ったり、被害者さまってそんなに偉いんですかねと言わせてみたり、被害者の妻(工藤静香)が死刑を執行しようとするのを勤め先の(交際しているらしい)店長が止めに来るのも、愛情からというより、人殺しとは結婚できないからだと示唆したり、非常にリアルで重いテーマを盛り込んでいるのだが、劇的な掘り下げの深さには疑問がある。こんな考え方も、感じ方もあるよね、という羅列のレベルに止まっている気がする。それは、作劇の妙を発揮した「親の顔が見たい」に比べると、どうしても避けられない印象だ。

■役者では刑務官を絶妙に演じるささきまことという人が出色。この人は性格俳優として昭和の新劇や軽演劇の名優たちのレベルに匹敵する存在になる可能性が感じられる。

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