旅は映画に似ている…そしてあなたを旅に誘う『青春18×2 君へと続く道』

基本情報

青春18×2 通往有你的旅程 ★★★
2024 スコープサイズ 123分 @TJOY京都
原作:ジミー・ライ 脚本:藤井道人、林田浩川 撮影:今村圭佑 照明:平山達弥、シュー・チュンチュエン 美術:宮守由衣、ヤオ・クオチェン 音楽:大間々昂 監督:藤井道人

感想

■ゲーム会社を解任された創業者のジミー(シュー・グァンハン)は、日本出張を抜け出して、18年前、台湾のカラオケ店「神戸KTV」で一緒に働いて恋した娘アミ(清原果耶)の面影を求めて、鉄道旅に出る。。。

■台湾のスター、チャン・チェンが映画化を熱望した原作が、回りまわって藤井道人によって映画化された、結構な大型企画。台湾と日本の各地でロケを行い、実はCGもかなり駆使されているようだけど、基本的にはロケ撮影で作った映画。日本と台湾の、時間と空間と言語が渾然一体となって、陶然とする時空間を醸し出すところが映画のマジックで、素直に旅に出たいなあと観るものの心を動かす映画なので、実際、成功作。予告編を観て、これは観るべき映画と直感したその感覚は間違いではなかった。

■台湾の好漢シュー・グァンハンは33歳なのに18歳の青年を演じて違和感が皆無だし、清原果耶はちょとお姉さんっぽい娘を当然ながら安定感のある演技で応える。しかも通りすがりの脇役に黒木華松重豊が出演する。とにかく、ロケ撮影が素晴らしくて、それだけで見応えがある。撮影は『リボルバー・リリー』も撮っていた今村圭佑で、台湾の夏を暖色系で撮り、日本での冬の旅を淡い寒色系で撮りわけて、オーソドックスな手法をきっちり披露する。ランタンフェスを双方対比した場面はやはり見ごたえがあり、とくに台湾の天灯(スカイランタン)をどこで飛ばすのかと思えば、家々の立ち並ぶ間の狭い空間を縫う鉄道の線路上で飛ばすのは素朴に驚いたけど。新北市平渓で行われる平渓天燈節でのロケだけど、平渓線というローカル線の線路上で行われるみたい。これは趣があるので、行ってみたいなあ。

■日本の北国で道枝駿佑演じる青年と道中を一緒にする場面も、旅の楽しさをよく描いていて、ドラマの本筋に関わるわけではないけど、非常にいい場面だった。いっとき触れあって、その後一生会うこともないかもしれない人と、出会ったことの喜びとか、そんな時間の尊さを思い出させてくれる。

■それに比べるとクライマックスはメソメソし過ぎで、昨今の日本映画の悪ところが露呈している。最近の日本のドラマとか映画は、とにかくメソメソ泣きすぎで、観客が単なるつられ泣きを感動と混同することを狙っているのだけど、日本映画の歴史を逆行していると思う。そんな作劇や演出は1950年代後半に増村保造中平康によって批判的に乗り越えられているはずなのに。

■最後のクライマックスの部分をもう少し冷静に理知的に再構成すれば、傑作になったのになあ惜しいなあとは感じるけど、日台合作でこのレベルの映画ができるなら、大したものだと思います。もっとやれ。


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参考

監督の藤井道人も撮影の今村圭佑も、この頃に比べるとしっかり成長している。
maricozy.hatenablog.jp
清原果耶はこっちの方が良いかも。
maricozy.hatenablog.jp

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