断絶 ★★★

断絶
2009 ヴィスタサイズ ?分
朝日放送録画
原作■堂場瞬一 脚本■岩下悠子
撮影■深沢伸行 照明■安藤清人
美術■吉田孝 音楽■栗山和樹
監督■梶間俊一

西島秀俊が久々にテレビドラマに出ているので、ただの平凡なサスペンスドラマではないだろうと録画して観てみのだが、果たして結構骨太な刑事ドラマ&政治ドラマだった。東映テレビらしくラストに綿々とした心情吐露があるのだが、複雑な人間関係の綾を脚本はよく整理している。
■ある地方都市で若い女が殺され、上層部からの操作妨害を撥ね退けながら刑事が捜査を続ける。一方で、地方政治のドンである国会議員の後継者問題は泥沼の様相を呈していた。二つの線はどこで交差するのか・・・という物語を松平健本田博太郎石橋蓮司星野真里津田寛治櫻井淳子黄川田将也柏原収史原田大二郎仁科亜季子渡辺いっけい、佐藤B作、長塚京三という豪華キャストで描くなかなかの大作。なぜか東映京都撮影所が撮影拠点となっている。
■一番の弱点は清濁併せ呑む巨魁であるはずの保守政治家を演じる松平健に悪の気配が皆無であること。松平健といえば勝新太郎の弟子だが、たとえば勝新とか佐分利信とか山崎努ならそのままぴたりと嵌る役柄も、松平健だと健康感が立ちすぎて、カリスマ性やアクや人間的の深みが無いのだ。殺される女が星野真里というのは典型的な役不足だろうが、ほんとうの犯人は西島秀俊に違いないと思ったあなはた「さよならみどりちゃん」の見過ぎです。一方、本田博太郎が代議士の私設秘書を演じて、得意の役柄を嬉々として熱演している。自殺シーンは博太郎ファンの期待どおりの名演を見せてくれる。代議士一族を守り通すために自らを犠牲にすることを厭わないある種の日本人の典型像を見事に演じ切っており、ちょっと泣けましたよ。西島秀俊本田博太郎を取り調べるシーンもあり、両人のファン(私だけ?)にはタマランご褒美です。
■「プライド」を観たあとでは、ビデオ撮影ながら、安藤清人の照明が秀逸なことがよくわかり、さすがに「火天の城」を手掛けただけのことはあると感心した。「プライド」は新国立劇場でロケしたわりには映像が貧乏くさかったからなあ。

断絶 (中公文庫)

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