カナリア ★★★☆

カナリア [DVD]

カナリア
2005 ヴィスタサイズ 132分
DVD
脚本■塩田明彦
撮影■山崎裕 照明■佐藤讓
美術■林千奈 音楽■大友良英
監督■塩田明彦

■テロ事件を起こして崩壊した教団から保護された少年は、祖父に引き取られた妹を取り返すため、施設を脱走し、偶然であった家出少女(谷村美月)とともに東京へ向かう・・・

オウム真理教とは何であったのかを、ひとつの視点から総括し、そこに囚われ洗脳された子供たちが再生してゆく様子を見つめる。昨今、アメリカ映画では対テロ戦争に対する厭戦気分と反省を娯楽映画として提供して、決してアメリカ国家の知能指数ジョージ・ブッシュのそれとは違うのだと主張しているのだが、日本映画では、連合赤軍事件同様に日本人のトラウマとなったオウム事件について考察を試みるという余裕も意欲も持たなかった。それはバブル経済に対する反省というものが、日本映画のなかに見当たらないことと同様に、日本映画の弱体さを示している。

■ここでは少年の頑なな心が、谷村美月との旅を通じ、またかつて信仰の師匠であった西島秀俊との再会によって、ほぐされてゆくまでをヴィヴィッドに描くのだが、ラストはやや甘い。西島秀俊の、教団は理想ではなく、もうひとつの現実でしかなかったという述懐にはひとつの真実が宿っているだろう。それが全てではないにしろ、劇映画としてのひとつの義務は果たしている。西島秀俊は出てくるだけで、画面を粟立たせる稀有の存在感をここでも示している。

■主演の石田法嗣は硬いが、谷村美月がいい。「茶々」も観たし、当然「神様のパズル」も見に行くよ。

■製作はオフィス・シロウズ、衛星劇場ほか。


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