楽屋 〜流れ去るものはやがてなつかしき〜★★★

楽屋 〜流れ去るものはやがてなつかしき〜
芸術劇場 NHK教育
2009年 シアタートラム
脚本■清水邦夫 美術■二村周作 照明■小川幾雄 演出■生瀬勝久
出演■渡辺えり小泉今日子村岡希美蒼井優

■なんでも非常に有名な戯曲で、高校演劇等でも取り上げられるらしいが、確かになじみやすいし、技巧的にも面白い芝居だ。本編後に渡辺えり生瀬勝久の対談があり、渡辺えりの熱血演劇少女ぶりには感心したが、実際、この配役では、渡辺えりのベテランの貫禄が際立つ。テレビや映画ではその力量の一端しか発揮できていない芸達者のようだ。
小泉今日子は昨今舞台にも力を入れているようだが、アイドル出身の女優は総じて発声が弱く、南野陽子にしろ中山美穂にしろ、女優としては映えない。どうしても腹から出ている声には聞こえないので、説得力に欠けるのだ。その意味では、ちょっと頭の弱い感じの蒼井優が天然な感じを力強く出して、やはり天性の素質を感じさせる。
■もともとの戯曲は舞台に関わって想いを果たせなかった女優たちへの挽歌と70年安保の挫折の記憶を重ね合わせたものだろうが、生瀬勝久の演出はところどころドタバタ喜劇的な要素も交えて、娯楽性を強調している。ただ、楽屋に巣くう妄念の世界と生身の人間世界の往還が、もう少し神秘性をもって描かれるべきではないだろうか。

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