鴨川ホルモー ★★★

鴨川ホルモー
2009 ヴィスタサイズ 113分
MOVIX京都(SC5)
原作■万城目学 脚本■経塚丸雄
撮影■江原祥二 照明■土野宏志
美術■西村貴志 音楽■周防義和
監督■本木克英

■京都の大学で古より伝わる、式神を駆使する”ホルモー”競技の世界に参加することになった京大の新入生たちの姿を描く青春伝奇映画(?)。
■近年映画「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズで悪評高い本木克英の最新作で、しかもVFX満載という触れ込みだったので心配したが、これは十分水準作ではないか。笑いの狙い方も、変な言葉(鬼語)を叫びながらパパイア鈴木振付の変なポーズをするという、幼稚園児レベルのギャグ(?)で、どうなることかと思ったが、ホルモー競技の醍醐味が納得できると、ちゃんとこれが微笑ましく見えてくるから不思議だ。ホルモー競技の醍醐味とは「風林火山」のそれであるというのが、原作未読の観客にとっては面白みの肝になるだろう。実際、この映画を観れば、鴨川沿いの空き地でホルモーをやってみたくなる。GOZNOほかによるCG表現もレベルは高く、リアルな質感を要求されないとはいうものの、ホルモー競技での集団戦闘は絵的な厚みがある。CG無くして成立しない映画だ。「レッド・クリフ」の醍醐味も、(ほんのちょっと)味わえるのだ。
■キャストは山田孝之がちょっとボンヤリした感じの京大生を嫌味なく演じて素朴な恋愛沙汰を通じて青春映画の香を放つし、神々のペナルティを喰らう濱田岳のヘナチョコぶりも好演で、これは役得。このヘナチョコぶりは素直に楽しい。なかでも秀逸なのが栗山千明で、何故か大木凡人似というギャグを大真面目に演じ切る。クライマックスでのホルモー競技での見せ場もアクション映画的なカタルシスがあり、くるくる回転しながら「退却」を命じるホルモーの身振りも可愛い。この映画は、全体に大学一年生には見えないそれなりに成熟した男女が傍目には幼稚な悪ふざけにしか見えない奇妙な行為(競技)を大真面目に演じるというところに面白みのすべてが託されており、きわきわのところで成功している。そこには「てなもんや商社」でデビューし、「釣りバカ」シリーズも支えた本木克英の喜劇演出の経験が確実に生かされている。
■松竹京都映画のスタッフが京都大学を中心とするありふれた左京区付近の風景を自然に切り取って見せるが、特に京大吉田寮でのロケは記録フィルムとしても貴重なものになるだろう。京都で大学生の青春を描くにつけては、当然のように「ヒポクラテスたち」の喫茶店リバーバンクが登場するのも、さすが本木克英。緑や赤の発色からしてデジタルビデオ撮影と思われる。(調べたところ、ソニーのデジタルシネマカメラF23で撮影されたそうだ。)
■製作は松竹ほか、制作は松竹映画。

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