幽霊屋敷の蛇淫 ★★★

DANSE MACABRE
1964 ヴィスタサイズ 95分
輸入DVD


 ロンドンにポー先生(モンゴメリー・グレン)を訪ねた若い記者(ジョルジュ・リヴィエール)はポー先生の友人ブラックウッド伯爵に、幽霊が跋扈するという自分の城で一夜を無事に明かすことが出来れば100ポンド差し上げると賭けに誘われる。無謀にも賭けに乗った記者は、陰鬱な古城であやしの美女と契りを結び、次々と姿を現すこの世のものではない人々の死の光景の再現に恐怖する。あまりのことにあやしの美女と古城を脱出しようとするが・・・

 B級、C級映画の職人監督アンソニー・ドーソンの代表作とされる古典的怪奇映画。詳しい物語はこちらのHPを参照のこと。日本一詳しいあらすじが載ってます。多謝。

 イタリアとフランスの合作で、正規の映画はフランス語版で、映画吹替え版はカット版らしい。輸入DVDでは、英語吹替えの無い、米国版でカットされた場面だけに、英語字幕が付くという変則的な仕様。頼むから全編英語字幕を頼むよ。もちろん、クローズド・キャプションも無し。意地悪。

 でも、端的に言って物語自体はどうでもよく、ヨーロッパの怪奇映画にありがちな、雰囲気重視で、論理的とは言いかねる、エロティックな物語が展開する。この物語性の違い、ドラマツルギーの質的差異は、例えばロジャー・コーマンのポーものなどと比べると顕著だ。個人的にはアメリカ映画的な即物的な論理性が、怪奇映画的な叙情と結びついたときに、怪奇映画の傑作が生まれと信じているので、こうした詩的な怪奇映画は少し評価が下がってしまう。

 画質は良好といいかねるDVDだが、延々と続く古城のナイトウォークの場面は間違いなく絶品で、手にした燭台だけを光源としたコントラストの高いモノクロ映像は陶然とする美しさ。ヨーロッパ映画の美質はこうした部分に宿っている。唐突に闖入してくる半裸のムキムキ男が爆笑を誘うが、ヨーロッパ的、あるいはイタリア的なイコンということで宜しいでしょうか?

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