さよなら。いつかわかること ★★★☆

GRACE IS GONE
2007 ヴィスタサイズ 85分
DVD

さよなら。いつかわかること [DVD]
イラク戦争に兵士として出征した妻の戦死の報告を受けた夫(ジョン・キューザック)は、二人の娘にどう説明すればいいのか迷いながら、娘たちをテーマパーク”魔法の庭”への長距離ドライブに連れ出すのだが・・・

■ジェームズ・C・ストラウスが脚本と監督を務め、イーストウッドがスコアを提供した、ロードムービーかつホームドラマ。というか、母親の戦死で実質的なホームを失った一家が、漂流するロードムービーと言うのが正しい。いわゆるハリウッド映画とは根本的に異なる、超低予算のインディーズ映画で、実質的にたった80分の中に、娘たちに対する接し方に対する迷い、妻の死を受け入れられない弱さ、父親の役割に対する不全感、といった主人公の心理がちゃんと描きこまれ、対して物心ついている姉妹の姉(シェラン・オキーフ好演)が、父親の行動に不審を抱き、その秘密にそっと触れるデリケートな描写が正確に対置され、静かに心に滲みる良作となっている。ちょうど、60年代後半から70年代前半にかけてのアメリカンニューシネマのタッチに似ている。

■もちろん、”反戦映画”としての側面も持っているのだが、あくまでミニマムなホームドラマとしての矜持を崩さず、声高に或いは押し付けがましくメッセージを言い募る映画ではなく、誰しもが、この家族に起こったことの理不尽さと残酷さに自然と突き当たるように作られている。


© 1998-2024 まり☆こうじ