オーストラリア ★★★

AUSTRALIA
2009 スコープサイズ 165分
TOHOシネマズ二条(SC9)

オーストラリア [DVD]
■第二次大戦前のオーストラリアで、白人とアボリジニーの混血少年の成長と、夫を訪ねてやってきた英国貴婦人と牛追いの荒くれ者のラブロマンスを並行して描きながら、オーストラリアの”盗まれた世代”の問題を浮き彫りにする、オーストラリア宣伝映画。

■監督のバズ・ラーマン以下、オージー映画人総結集で贈る、オーストラリア・ラブな大河ロマン。さらに西部劇と戦争映画を結合させた超大作で、繊細な味わいは無いものの、バズ・ラーマンのメリハリの効いた演出は悪くなく、2時間45分を一気に見せ切る。華やかで素直に楽しい映画である。

■とにかく、演出はマンガ的で、中盤には主人公の少年が暴走する牛の大群をアボリジニの魔術(?)で鎮めるというやりすぎなシーンもあり、歴史的な事実とファンタジーが混交している。監督の意図は明確で、オーストラリアの真の主役は先住民の皆様です、というメッセージを衒いなく打ち出す。

■ドラマとしては、悪役のフレッチャーを演じるデヴィッド・ウェンハムという役者が少々地味で、馴染みがないのが残念なところなのだが、最初から最後まで見事な悪役ぶりである、久々に見ごたえある悪役だった。

ニコール・キッドマンを美しく見せることも抜かりが無く、コミカルな衣装からゴージャスな扮装まで、もう眼一杯愉しませてくれる。とにかく立ち居振る舞いの凛々しさと高貴さは、なかなか他の女優の及ぶところではなく、往年のハリウッド女優の香気を今に伝えている。彼女に比べると、ヒュー・ジャックマンが霞んで見えるのだが、この男優の真価が発揮されるのは、ミュージカル映画に主演する時ではないだろうか。せっかくバズ・ラーマンの映画なのだから喉のよさを披露する場面があってもよかったのに。

■VFXは垂れ流し的に使いすぎで、デジタル合成のオンパレード。しかも、エフェクトハウスもオージー勢を集結しており、ウェタデジタルなどの大手は参加していないようだ。質的にはバラつきがあるし、最近は正直食傷気味だ。

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