山猫 ★★★

LA NUIT AMERICAINE
1973 ヴィスタサイズ 186分
NHK BS2録画

山猫 イタリア語・完全復元版 [DVD]
シチリアガリバルディの赤シャツ隊が上陸した頃、サリーナ公爵(バート・ランカスター)は時代の動く大きな潮目を感じ、前途を期待する若い世代タンクレディアラン・ドロン)が革命軍に身を投じることを好意的に考える。だが、ガリバルディによるイタリア王国統一は山猫からハイエナとジャッカルに(貴族から新興成金や打算的な政治家たちへ)国の権力が移ったにすぎないと感じるのだった・・・
ビスコンティの”名作”の復元完全版をやっと観ることができたのだが、さすがにオーバーチュアは無いものの、インターミッションが入る3時間強の超大作仕様。とにかく、美術や装飾のもの凄さは、本物ならでは。ハリウッドでもこうした貴族を描いた文芸映画は少なくないが、ここまでのリアリティと説得力を持ったものは無いだろう。なにしろ、貴族の屋敷も撮影所のセットではなく、現物を使用したロケセットなのだ(未確認なので人に言わないこと)。スコープサイズで悠々と展開する華麗な貴族社会に、われわれ下々の下賎の身は恐懼にたえないといった心持になる。本来は、映画館の巨大なスクリーンで観てこそ値打ちのある映画だ。特に凝った照明が工夫されているわけではなく、むしろ時代劇の映像設計としては明るすぎると思うが、煌びやかさを表現するためにはやむを得ないだろう。
■しかし、ハリウッド映画のルールとは異なり、様々な時代背景を一切説明しないので、事前にイタリア史を勉強したうえで観ることが必要。正直、ハリウッドで脚本を作れば、もっとわかりやすく、しかも簡潔なドラマが出来上がるはずなのだが、「わからん人放っときますよ。いちいち説明しませんよ。義務教育やないねからね」(by大空テント)型の大人向き映画。かといって、観念的で難解な映画ではなく、描写自体はひたすら平明である。
■しかしね、この説明を欠いてひとり納得しているような姿勢は、芸術的な規範の高さというよりもイタリア映画ならではの鷹揚さと考えたほうが正しいような気がするよ。しかし、アラン・ドロンの黒い眼帯はやばいよね。エロ過ぎ。

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