コキーユ　貝殻　★★★

コキーユ　貝殻
1999 ヴィスタサイズ 95分
BS2録画
原作■山本おさむ　脚本■山田耕大
撮影■上野彰吾　照明■赤津淳一
美術■稲垣尚夫　音楽■山田武彦
監督■中原俊

■同窓会で再会した中年男女が、３０年前の中学時代にすれ違った初恋を取り戻そうとするが・・・
■つのだ☆ひろのメリージェーン（のカラオケ）をバックに、小林薫の聞こえない耳元に風吹ジュンが囁きかける冒頭のシーンは非常によくできていたので期待したのだが、終盤の展開は陳腐で、ラストの同窓会で小林薫が泣き出すのもよくわからない。辛うじてウェルメイドな映画になっているが、終盤に憎まれ役の益岡徹で決着を付けるのは、やはり安易に過ぎる。このあたりは、荒井晴彦とか田中陽造だと、もう少し文学的になっていただろう。
■タイトルの意味は、小林薫の障害で聞こえない右耳と、コクトーの「私の耳は貝の殻　海の響きをなつかしむ」をかけている。聞こえない方の耳に重大な告白を囁くというアイディアは原作の功労だろうが、この映画のいかにも映画的な良いシーンは、このアイディアに負っているところが多い。
■中原俊は大人の恋愛劇を手堅くまとめているが、映画としては先日の「落語娘」の方が卓越していると思うよ。ボノボが直接制作だが、れっきとした松竹映画である。