正直過大評価だと思うシリーズ第6作『緋牡丹博徒 お竜参上』

基本情報

緋牡丹博徒 お竜参上 ★★★
1970 スコープサイズ 99分 @BS松竹東急
企画:俊藤浩滋日下部五朗 脚本:加藤泰鈴木則文 撮影:赤塚滋 照明:井川徳道 美術:和多田弘 音楽:斉藤一郎 監督:加藤泰

感想

浅草六区の芝居興行をめぐって、鉄砲久一家(アラカン汐路章ほかの皆さん)と鮫洲一家(安部徹、名和宏ほかの皆さん)の抗争のなかで、鉄砲久一家に味方するお竜さんを描いたシリーズ第6作で、世間では名作と言われるんだけど、例によって過大評価だと思います。再見しても、明らかに、そうだった。鈴木清順とか深作欣二とか加藤泰とか工藤栄一とか、当時の映画青年たちが「運動」としてカリスマ化してきた歴史があるので、その評価がどうしても映画史のなかに後年も残ってしまうけど、そろそろ見直しが必要と思う。

■苦界に身を沈めた妹を思う文太のエピソードは良いし、そこは演出も冴えるけど、浅草の芝居関係のエピソードがさっぱり弾まず、鮫洲一家がやたらと嗜虐的で、すぐに拷問ショーを始める趣向もよくわからない。今観ると、単純に無意味な悪趣味。文太以外にも脇役に新東宝組が多くて、三原葉子沼田曜一と、ほとんど台詞もないのに、同窓会みたいだけど、特に三原葉子は何のための呼ばれたのか。多分、延々とみかんを食べるためだけど!

■有名なみかんを使った演出だけど、再見すると、そんなに大した趣向ではない。正直、そんだけ?と思う。いわゆるシナリオ作成上の典型的な「シャレード」の使用例だけど、そんなに上手くないよ。なんだか伝説化してるけど、もっと上手い例はいくらもあるからね。

■このお話の肝になる山岸映子は当時売り出しだったみたいだけど、ごめん、ホントにきつい。完全にルッキズムだけど、この役には向いてないと思う。最初は完全なコメディリリーフかと思った。だって、山城新伍と一緒に出てくるんだもの。むしろ、冒頭に登場する夏珠美のほうが、今見てもナチュラルに薄幸そうな演技で良かったけどなあ。この頃の東映は、女優は使い捨て状態だったので、キャリアが続かないのだけどね。このあたりの配役の微妙さは、どうも加藤泰の趣味が絡んでいる気がする。というか、加藤泰の映画は基本的に加藤泰の個人的な趣味だけでできているのだけど。

■そして、一番の枷は斉藤一郎の音楽で、これを渡辺岳夫とか木下忠司にすれば、ぐっと気持ちが入るのになあ。予算がないのに浅草十二階で立ち回りする趣向は見上げたものだけど、さすがに無理があるし。限られた予算で奮闘した美術担当の井川徳道の苦労が忍ばれるところだ。

■本作を観ると、シリーズ初期の鈴木則文の演出の上手さとか、脚本の上手さを逆に再認識することになるのだった。加藤泰の映画としては、多分次作の『お命戴きます』の方が、ずっと良かったと思うけどな。


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