壬生狂言「道成寺」「土蜘蛛」

■はじめて壬生狂言に出かけたが、予想以上に面白い演劇だった。通常の狂言と違って台詞は無く、鉦、太鼓、笛の鳴り物と演者の演技だけで見せる無言劇というのも意外だったが、その舞台が屋外に開かれ、しかも宙吊りになっているかのような、2階部分に設けられているのにも驚いた。しかも、その中空に開かれた舞台空間という特異な性質を生かした立体的な演出も凄い。「土蜘蛛」なんて何も予備知識無しで見ると、あっと驚く趣向があり、活劇や怪奇劇好きにはたまらない。
■「道成寺」は蛇体の面や衣装が見所で、舞台から乗り出さん勢いで僧に迫る蛇体の演技も白熱している。倒れても倒れても蘇る演出など、80年代ハリウッド映画のホラー映画演出を軽く何百年か先取りしている。「土蜘蛛」なんて、物語は完全に怪奇活劇で、松明を使った怪奇演出、立体的な舞台の特質を最大限に生かしたアクション演出、ご存知の蜘蛛の糸を撒き散らす特殊効果など、ケレン味満載の傑作だ。
■また、屋外舞台の面白さは自然の風が自在に舞台の上や舞台と客席の間を吹き渡るところにもあり、劇がヒートアップすると風も強さを増して、土蜘蛛の糸を吹き飛ばすように作用するという、偶然の面白さが味わえる。(続く)

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