イノセント・ボイス 12歳の戦場 ★★★☆

VOCES INOCENTES
2004 ヴィスタサイズ 112分
DVD

■80年代のエルサルバドル、政府軍とゲリラ軍の内戦は泥沼の様相を呈し、政府軍は12歳に達した少年たちを徴兵しはじめた。両者の境界地域に住む人々は日夜突発する銃撃戦に恐怖を募らせ、無邪気な少年たちも徐々にゲリラ軍のシンパとなってゆく・・・

■戦争が子供たちにとって、どれほどの恐怖であるかを生々しく体験させる意欲作である。絶望的なほどの恐怖に晒された日常の中でも、子供たちは子供らしくプロレスごっこに興じていたりして、日常と戦争の渾然一体となった世界をリアルに実感させてくれる。その意味では、この映画の目の付け所は大変貴重である。徴兵を避けるため、トタン屋根の上に子供たちが避難して寝っころがっている場面など、幻想的な詩情が溢れた名シーンだ。過酷な世界と対峙する子供たちが、それでも無垢な憧れや夢見る心を失っていないことを、眼下の戦争状態と対置させた見事な場面である。

■脚本は実際にエルサルバドルで子供時代に戦争を経験し、アメリカに亡命したオスカー・トレスが書いたオリジナル作品で、メキシコ出身でハリウッドで活躍するルイス・マンドーキが故郷で撮影した。

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