ラストゲーム 最後の早慶戦 ★★★

ラストゲーム 最後の早慶戦 (通常版) [DVD]

ラストゲーム 最後の早慶戦 (通常版) [DVD]

  • 発売日: 2009/02/27
  • メディア: DVD

ラストゲーム 最後の早慶戦
2008 ヴィスタサイズ 96分
イオンシネマ久御山(SC7)
脚本■古田求
撮影監督■阪本善尚 照明■大久保武志
美術■春木章 音楽■和田薫
VFXプロデューサー■篠田学 VFXスーパーバイザー■進威雄
監督■神山征二郎

■昭和18年、東京六大学野球も廃止され、学生の徴兵猶予が停止されると、出征の前に野球部の学生たちに最後の試合をさせてやりたいとの慶応大学塾長(石坂浩二)の申し出を早稲田の野球部顧問(柄本明)は快諾するが、左翼教員たちが官憲に睨まれている早稲田の総長(藤田まこと)は軍の弾圧を恐れ、激しく拒絶する・・・
■最後の早慶戦の話は、昔岡本喜八が映画化していたが、テレビで観かじっただけで、きちんと観ていない。本作は、監督が神山征二郎なので、旧左翼的な視点から硬直的なモノの見方で類型的に反戦映画が物語られるのかと危惧していたのだが、結果的には案外よくできた映画である。脚本が「薄化粧」の(古いなあ)古田求であったことも良かったのだろう。神山征二郎という監督は、新藤兼人近代映画協会出身なので、左翼ではあるものの、教条主義者ではなさそうだ。
渡辺謙の長男の渡辺大が一応主演だが、実際は群像劇で、早慶戦の開催に至るまでの双方の大学の思惑の違い、その中で独断で開催を決意する早大顧問の姿を描きこむことで、反戦映画としてだけでなく、働くおじさん映画(仮称)としての見ごたえを加えている。本当は若者にこそ見て欲しい映画なのだが、当時の若者やいま社会を支えてい苦労している中年層に対しても訴求する作劇は、娯楽映画としては見事なものだと思う。ラストは有名な神宮外苑での学徒出陣壮行会の場面が再現され、この映画の主人公たちこそが、あの歴史的記録フィルムの一員であった事実が示される。この構成は巧い。
■撮影は阪本善尚なので、流麗なキャメラワークを予想していたが、フィックスを中心として、フォトジェニックな綺麗な画ではなく、芝居に密着しており、地味な印象だ。「男たちの大和」では、映画の内容というよりも、参加すること自体が、ある種の立場の人々から批判を浴びたはずだが、その罪滅ぼし(?)ということだろうか。VFXは球場の遠景をデジタルマットで合成しているが、総じてあまり出来は良くない。クライマックスの試合場面を中心にデジタル合成のカットは多いようだが、精度はいまひとつという印象だ。
■製作はシネカノン東急レクリエーションほか、制作はシネカノン。企画、配給もシネカノンだが、プロデューサーは奥山和由で、監督とは「ハチ公物語」以来の名コンビ(?)である。

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