たみおのしあわせ ★★★☆

たみおのしあわせ
2008 ヴィスタサイズ 118分
京都シネマ(SC3) 
脚本■岩松了
撮影■山崎裕 照明■尾下栄治
美術■松尾文子 VFXスーパーバイザー■小田一生
音楽■勝手にしやがれ
監督■岩松了

■一人息子たみお(オダギリジョー)が瞳(麻生久美子)と結婚に向けて動きだしたとき、父(原田芳雄)は自分自身の恋愛にも大きな変化が生じつつあることに気づかなかった。その矢先、NYから亡き妻の弟(小林薫)が戻ってくるが・・・

小津安二郎を下敷きに、奇妙な人間関係をそこはかとない微妙な間とズレを駆使しながら描き出す大人のホームドラマ。というか、岩松了のスケベ演出が麻生久美子を嘗め回すというエロ映画。でも、麻生久美子がとっても綺麗に撮れているので、とても嬉しい。もっと分かりにくい映画かと警戒していたのだが、杞憂だった。人間のコミュニケーションの微妙なズレを面白がる演出であることが体感できれば、途中から面白くて仕方なくなる、そういう映画だ。

小津安二郎だけではなく、ヒッチコックの「めまい」や「卒業」「フィールド・オブ・ドリームス」あるいは「サイン」(?)といったさまざまな映画の記憶が満載で、映画が撮れて嬉しくてしょうがないという感じだが、人間の捕まえ方がしっかりしているので、演出は地に足が着いている。引き合いに出して悪いが「空中庭園」の監督などと比べると、その大人度の違いが鮮明だ。

■「彼のオートバイ、彼女の島」のミューズ原田貴和子を起用するあたりも、スケベ心が堪らないわけだが、麻生久美子に亡き母親の浴衣を着せて父息子揃って発情する場面など、演出、キャメラともに秀逸。しかし、露骨にエロすぎないだろうか。結局、主役は原田芳雄だったのかということが分かるオヤジのためのファンタジー映画である。

■製作はスタイルジャム、メディアファクトリーほか、制作はスタイルジャム、ビーワイルド。

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