美しい夏 キリシマ ★★★

美しい夏 キリシマ
2003 スコープサイズ 118分
DVD
脚本■松田正隆黒木和雄
撮影■田村正毅 照明■佐藤譲
美術■磯見俊裕 音楽■松村禎三
CGディレクター■木村俊幸 視覚効果■灰原義晴
監督■黒木和雄

■昭和20年の九州で、肺浸潤でぶらぶら療養中の少年は、勤労動員先の工場が空襲を受けたとき、頭が石榴のように割れた同級生を助けずに逃げたことをトラウマとしながら暮らしていたが・・・
黒木和雄の実際の経験に基づいた自伝的映画。上記のトラウマは実際に監督が死ぬまでかかえ続けたものだという。DVDには佐藤忠男と監督との対談も収録されており、併せて観たほうがよく理解できる。監督の演出は、演技指導をほとんど行わず、基本的にファーストテイクでOKになるという、さすがにドキュメンタリー出身らしいユニークな方法論で、主演の柄本佑はほとんど演技らしい演技もせず、ただぼうっと存在し続けるため、例えば岡本喜八の「肉弾」の寺田農のように鮮烈な人間像を打ち出すには至っていない。
■進駐してきた米兵に竹やりを構えて「殺せー」と絶叫しながら突撃する少年の姿は、当時の黒木少年の果たせなかった夢であったらしいが、これも演出としてはちょっと淡白に過ぎるような気がする。少年の家は地主の系統なので非常に立派な日本家屋なのだが、小作農の石田えりの家は畳すらなく、板の間にゴザを敷いて暮らしているのも、当時の実際の農家の姿であったという。物語自身よりもそうしたコメンタリーで語られるディテールのほうが興味深い。
■少年の家で奉公する小作農の娘が、ちょっとエキゾチックな顔立ちなので誰なのかと思いきや、小田エリカ(現在のエリカ)であった。この頃のほうが癖の無い素直な演技である。
■製作と制作はランブルフィッシュ

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