CHARLIE WILSON'S WAR
2008 ヴィスタサイズ 101分
ユナイテッドシネマ大津(SC5)
■下院議員のチャーリーは色っぽい謎の大富豪に頼まれてソ連侵攻によって苦しむアフガンの支援に手を貸すことに。パキスタンのアフガン難民キャンプを視察してそのあまりの惨状に義憤を感じた彼は、CIAのはみ出し捜査官とともに、ソ連の最新鋭ヘリを叩き落すスティンガーをアフガンに供与するため、パキスタン、エジプト等各国の首脳に根回しを開始する・・・
■80年代のソ連によるアフガン侵攻に対抗するため、アメリカのいち下院議員が委員会で莫大な予算をつけてアフガンゲリラに地対空ミサイルを与え、ひいてはソ連の崩壊を早めたという事実(どの程度史実に忠実なのかは不知)をコメディタッチで描き出し、物語の最後は、その後のアフガンの処置が不徹底だったため、テロリストの流入を見逃し、今日の泥沼の対テロ戦争を招いたことを示唆して終わる。その総括のしかたは非常に分かり易いし、アメリカの他国への介入の仕方が軍事中心という欠点を持っていることや、アフターケアが不十分で、その後の状況悪化の種を見逃してしまったりという、アメリカの犯しがちな過ちをシニカルな笑いに包んでアメリカ人に限らず世界の観客に訴えかける秀作である。
■昨今、9・11以降のアメリカ自身の姿を謙虚に振り返り、非を素直に認めようとする映画がハリウッドで次々に生まれており、そのことはアメリカが歴史から苦い教訓を学び取りつつあることを分かりやすく示して、アメリカという国に対する他国の嫌悪感を少しは薄めることに成功するだろう。こうした論調のハリウッド映画の量産は、そうした意味を企画意図に持っているのは確かだろう。大人の世界的には、本年の大統領選挙に絡む思惑も絡んでいるのだろう。
■日本で考えればフィクサーの怪老人といった役どころになる政治的な(同時に宗教的な)意図を持って政治家に直接影響力を行使する謎の大富豪をジュリア・ロバーツが演じているところがゴージャスなところだが、実際は演技的に見せ場があるわけでもなく、トム・ハンクスとのラブアフェアはあるものの、ドラマ的にはあまり深くは掘り下げられていない。サービス(?)のビキニシーンもあって、本人はノリノリらしいが。
■CIAの曲者を演じるのが性格俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンで、これはまさに巧演。アフガンの未来をシニカルに予見するという重要な役を存在感と技巧的演技で支えきる。禅の師匠と少年の挿話の部分など、脚本の工夫が冴えている。基本的に、物語は非常に単純化されており、現実の政治の駆け引きの世界はもっと複雑怪奇ははずだが、ドラマ的な深さよりも構図の分かりやすさをこの映画は選択している。「魔法にかけられて」のエイミー・アダムスが秘書役で活躍するが、もともと地味なタイプの女優なので、こちらの方が印象が深い。
■なぜかVFXスーパーバイザーがリチャード・エドランドで、まだ現役だったかと驚く。Whodoo EFXがVFXの主担当だが、フリーのスーパーバイザーとして参加したようだな。