カンゾー先生 ★★★

カンゾー先生 [DVD]
カンゾー先生
1998 ヴィスタサイズ 129分
DVD
原作■坂口安吾 脚本■今村昌平天願大介
撮影■小松原茂 照明■山川英明
美術■稲垣尚夫 音楽■山下洋輔
CGI■坂美佐子
監督■今村昌平

■太平洋戦争末期、瀬戸内の漁村で開業する医師はなんでも肝臓病と診断するので”カンゾー先生”と呼ばれていたが、東京の会合でその熱心な取り組みが賞賛されたせいで、肝臓病の原因究明に躍起となり、ついには墓を暴いて死者から肝臓を取り出すまでに・・・
■われらがミューズ麻生久美子の映画デビュー作で、全身日焼けして真っ黒で胸元も尻もあらわな姿で現われる。しかもラストでは巨大な(巨大すぎる?)鯨に挑みかかるというアクションまで見せてくれる。正直ミスキャストだとでも思うが、熱演には違いなく、存在感は大きい。でもやっぱり色白の久美子姫のほうが嬉しいなあ。
■映画自体は、もっと粘着質の重い話かと思いきや、軽妙なコメディで、ラストには広島に投下された原爆の原爆雲がむくむくと変形してゆき、巨大な病変した肝臓に見えてくるというシュールな場面が、物語の意図を明確に伝える。意外な展開に呆気にとられつつ感動する。
■さらに、前述のとおりラストには謎の鯨が登場し、「白鯨」「鯨神」「きょうのできごと」といった鯨映画の流れをつぐ見せ場が用意されている。CGIは坂美佐子以下のグループが担当するが、実物大の鯨のモックアップはアップアートの上松盛明が担当している。日本映画としては鯨の表現にCGIが用いられた先駆例といえるだろう。いまこそ、「鯨神」のリメイクをお願いしたいのだが。鯨映画ファンは必見。

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