NEVER SAY GOODBYE〜ある愛の軌跡〜 ★★★☆

宝塚大劇場 宙組公演(BS2録画)
作・演出■小池修一郎 作曲■フランク・ワイルドホーン

デラシネを気取る写真家ジョルジュ(和央ようか)が人民戦線政府を樹立したスペインを訪れ、アメリカの女流劇作家キャサリン花總まり)と再会するが、フランコ将軍率いるファシストのクーデターが勃発、バルセロナは内戦の激戦地となる。反ファシストを標榜して人民が武装蜂起するが、彼らを人民委員会は支配下に置こうと画策する。さらに人民軍同士の戦闘に発展し、バルセロナは悲劇の巷と化してゆく。そのなかでジョルジュは自ら人民軍に身を投じることを決意する・・・

■はじめて観たときには凝った楽曲と日本語の歌詞がちぐはぐな印象で、劇的な展開と楽曲の力強さがすんなりと飲み込めなかったのだが、何度も観るうちにメロディが体に染込んで、自然にドラマに没入できるようになるからミュージカルは有り難い。和央ようか花總まりの両人の引退公演で、アメリカのフランク・ワイルドホーンに楽曲を発注するという超大作。実際、他の宝塚歌劇に比べても舞台装置のスケールと洗練の仕方は確かに、力がこもっている印象だ。しかも、スペイン内戦下でのモブシーンが多く、スケール感が強調される。モブシーンの見せ方にも工夫が凝らされ、振付、楽曲ともに見ごたえがある。

■正直なところ、複雑な楽曲が歌いきれていない歌唱力に難点がある人が幾人も見受けられるのだが、何度も観るうちに楽曲の優秀さと、作劇の骨太さに、初見のとき以上に感動を誘われる。少なくとも、日本映画では到底描き得ない世界であり、スケール感である。当然、スペイン内戦の悲劇に仮託しながら、未だに光明の見えない戦争の時代として幕開けしてしまった21世紀を告発しているのだが、そんな気宇壮大な企画は日本映画で成り立つはずがない。世界中のあらゆる場所が舞台になり得るという舞台劇の自由度の高さが羨ましい。

和央ようかの大らかな男役もいいが、勝気な女流劇作家を生き生きと演じる花總まりが素晴らしい。宙組の配役も粒ぞろいで、特に大和悠河の美貌はトップとしての将来が楽しみだ。これだけの傑作なのだから、ぜひとも再演を希望する。

参考

maricozy.hatenablog.jp
実は、ちゃんと再演されてました!これだけの傑作なので当然ですね!劇場で観たかったなあ(知らなかった)。。。

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