「オペラ座の怪人」(劇団四季:大阪四季劇場) ★★★☆

オペラ座の怪人 ロングランキャスト
 遂に見てきましたよ。劇団四季の「オペラ座の怪人」です。当然、映画版との比較になりますが、最大のネックは席が2階席の奥まったところで、あまりに舞台が遠すぎたこと。クリスティーヌもファントムも人影にしか見えない。しかも、照明が暗い舞台なので、見えないこと、見えないこと。
 因縁のシャンデリアが舞台上から急上昇するケレンで幕を開けるが、これも2階席からの鑑賞では、シャンデリアのデザイン、造形のチャチさが目に付いて困る。映画版の豪華絢爛なシャンデリアとは比べ物にならない。B級映画に登場するUFOにしか見えない電飾が哀れを誘う。正直なところ、この舞台の美術装置にはあまりセンスが感じられず、映画版のゴージャスな美術装置に軽く凌駕されている。舞台装置としては京都劇場で観た「エビータ」のシンプルで象徴主義的なもののほうがよほど優れている。
 ただ、歌唱の迫力は、楽曲の完成度の高さもあいまって感動的で、そこは舞台の生々しさに圧倒される。「わが愛は終わりぬ、夜の調べとともに」の台詞とともにラストの幕切れの鮮やかさは映画版に勝る。
 結果的に、トータルとしては映画版がかなりよくがんばっていたことが判明した。特に美術装置は舞台と比較にならない。映画版は戸田奈津子の迷訳が鬱陶しいけれど、楽曲の良さを映像的にも活かしていたジョエル・シュマッカーの演出の勝利といえよう。オペラ座の内部を立体的に、流れるようなキャメラワークで描くことができるだけで映画の機能的利点が勝る。

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