物語自体は意外なことにコテコテのメロドラマで、明治19年の鹿鳴館を舞台に、要人暗殺計画を巡って、政治と恋愛に関する美文調の台詞の応酬が音楽的な調子を奏でる。日下武史扮する影山伯爵の屈折した悪役ぶりが圧巻で、完全にアクション映画の”よく練られた”悪役のノリである。
映画では、市川崑が浅丘ルリ子と菅原文太の主演で撮ったが、未見。きっと浅丘の大芝居に辟易するに違いない、観るのが怖い代物だ。
個人的には演劇は舞台で観るよりも、テレビ中継でカッティングしてあるほうが見易い。寄りと引きのメリハリが効くし、役者の演技や表情もより詳細に把握できる。映画の見方に毒されていることは承知しているが、そのほうが心地よいので、NHKの舞台中継番組は重宝する。でもカメラの配置や編集はWOWOWのほうが上手なようだ。