「にっちもさっちも」

 小林信彦の時評的クロニクル、第五集。2002年のいろいろを綴ります。
 「わが<洗脳>体験」で、太平洋戦争の敗戦に対して、戦中に散々嘘を報道してきた新聞やラジオが一切の謝罪といったものを為さないままに戦後、掌を返すように民主主義の宣伝者になったことについて、「以後、ぼくはマスメディアをいっさい信用しないことにして、今日まで生きている。」という件には膝を打ちましたね。メディアリテラシーのあり方として重要なことが具体的に述べられている。
 このエッセイシリーズでも散々言われていることだが、近年のテレビの酷さには眼を覆いたくなる。というか、なるべくならテレビを見ずに済ませたい。つまらない番組を見ながら、ついついダラダラと日常を過ごしてしまうからだ。そして、重要なことから眼を逸らされてしまう。
 おまけに、本当にどうでもいいような番組やアニメを一晩中放映して、無駄に電気エネルギーを消費している。オイルショックの時に、あれだけテレビの深夜放送を中止したり、街のネオンを消したりしたのは、いったい何だったのか、本気で省エネを考えているのか?という疑問は、全く同感。私も常々思ってきたところだ。テレビの放送時間はせいぜい12時間程度もあれば十分だと思う。昼間の中途半端な再放送やワイドショーなど、全く無くても困らない。というよりも、ワイドショーは積極的に日本人をダメにしている害悪とさえ思う。さらに言えば、チャンネル自体が多すぎるのではないのか。無駄にテレビを見る習慣、依存症から抜け出すことを考えるべきではないか、などなど、疑問は尽きない。
 このシリーズでは毎回のように登場するTBSラジオの「アクセス」という番組は、先だって東京に滞在した際に聞いてみたが、えらいテンポで時事情報を繰り出すので驚いた。関西ではちょっと考えられない、確かに硬派な番組だった。あれはかなり集中して聴かないと話に追いつけないのではないか。そういう意味では、やはり若者向けではあるのだろうと感じた。個人的には「ストリーム」の「コラムの花道」のポッドキャストがお気に入りなのだが。

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