「特技監督 中野昭慶」

 まだ全部読めていないのだが、これは予想以上に良心的な書籍のようだ。
 中野昭慶が作品に関する細かい内容を詳細に記憶していないのがもどかしいところだが、その代わり編集担当の染谷勝樹の細かい注釈が史料価値も高く秀逸。特撮大作以外の一般作品に中野昭慶円谷英二に代わって特殊技術課代表として関わっていたことも具体的に明かされ、興味深いし、何よりも特撮班専任の助監督になったつもりは無くて、一般映画の監督デビューを諦めていなかったという生々しい証言を引き出しているのが特筆に価する。実際、藤本真澄金子正且から本編監督デビューを打診されていたとのことだ。
 この監督は特撮シーンも普通の劇映画と同じ演出意図で撮影してしまうので、毀誉褒貶が激しかったのだが、絶対本編監督として監督デビューすべきだった。絶対そちらのほうが資質が合ったはずだ。監督・中野昭慶、特殊技術・川北紘一という東宝映画があり得たはずなのだ。



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