釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束 ★★★

釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束
2007 スコープサイズ 114分
MOVIX京都(SC12)
脚本■山田洋次、朝原雄三
撮影■近森眞史 照明■土山正人
美術■須江大輔 音楽■信田かずお
VFXプロデューサー■佐藤高典 デジタルエフェクト■日本エフェクトセンター
監督■朝原雄三

 社長を後進に譲り会長に退くことになったスーさんだが、就任挨拶で言葉が出なくなり、ショックを受けて失踪。岡山にいることを突き止めたハマちゃんがスーさんを発見するが、清水建設が受注したリゾート開発への地元住民の反対運動に加担するはめに・・・
 シリーズ20作目(番外編含む)となる本作は、三国連太郎の老けぶりに驚嘆するとともに、意外にもシリアスな内容に感心しつつ、冒頭とラストの呼応の見事さに安心して笑わされる良心作で、シリーズ中でも佳作に入るだろう。
 清水建設というゼネコンを舞台とする以上、暴力組織とのつながりとか、談合といった業界が体質的に持っているダーティな部分を避けて通ることはできないはずだが、シリーズで正面から描かれたのは初めてではないか。さすがに、談合ネタは今後のお楽しみといったところだが、今回は建設反対のため座り込む住民に向けて暴力組織が動員される場面が用意され、さすがにガラの悪いあんちゃんたちは俳優ではなくコメディアンが演じているのだが、ちゃんと清水建設の現場担当者の了解のもとで暴力が発揮される段取りを描きこんであり、監督は本気である。
 そして、大逆転のキーとなる、岡山政財界の大ボスを演じるのが、なんと小沢昭一(!)で、1シーンのみで、しかも台詞が一言しか無いのが勿体無いが、その場面だけノワールな雰囲気を生み出した撮影の効果も大きく、ブラックな存在感を発散する。そのアップの説得力は絶大だ。スーさんとこの謎の人物の関係を軸に、戦後の混乱期にダーティな稼業で身を起こして一大ゼネコンを生み出したスーさんのリアルな姿の一端が明かされるのだ。それでこそ三国連太郎が演じる意味があるというものだ。しかも冒頭の挨拶に詰って、ハマちゃんが助け舟を出す場面と、スーさんのラストの告白の内容もちゃんと呼応しており、日本の戦後60年の歴史軸が織り込まれるという優れた脚本だ。意外にも良心的な意欲作で、正直驚いた。

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