南の島に雪が降る ★★★☆

南の島に雪が降る
1961 スコープサイズ 102分
BS2録画
原作■加東大介 劇化■小野田勇 脚本■笠原良三
撮影■黒田徳三 照明■今泉千仞
美術■小島基司 音楽■広瀬健次郎
監督■久松静児


 加東大介の実体験に基づいた原作を小野田勇が舞台化し、それをさらに映画化した東京映画作品。

 ニューギニアの前線で、兵士慰労のために演芸分隊を組織し、常打ちの劇場を作ると、ジャングルの各所に散らばった兵隊たちが内地の臭いを求めて参集してくる・・・

 特別出演に三木のり平小林桂樹森繁久弥フランキー堺といった駅前シリーズの常連を迎え、各人が自分のキャラクターを生かした見せ場を貰っている。特に生きた英霊と呼ばれるフランキー堺が儲け役で、いかにも舞台的な名場面を見せる。森繁久弥の場面は、さすがに渋すぎた。しかし、ニューギニア戦線の瀕死の兵士にしては、皆さん福々しいこと・・・

 有島一郎伴淳三郎西村晃といった芸達者ぞろいで、内地を想いながら散っていった、あるいは辛うじて生き残って内地に帰還できた兵士達の姿を静かに、感動的に描き出す。大きくくれば所謂反戦映画に属する映画だが、厭戦映画という方が正確かもしれない。舞台に食い入るように見入る観客の兵士達の表情がその全てを物語る感動作だ。舞台から捉えた兵士達のマスの表現は、日本映画全盛期ならではの演技的密度を伴って、観るものに静かに迫る。これほど簡潔にして要を得た表現は、現在の日本映画では不可能な芸だ。

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