EVITA(京都劇場) ★★★★

 京都劇場劇団四季による「EVITA」を観たのだが、なかなか堪能させる舞台だった。映画版は観ているが、ほとんど憶えていない。それほど傑作だったという印象も無いので、その程度だったのだろうと思うが、今回舞台版で見直して見ると、かなり辛辣な作品だ。
 チェ・ゲバラ狂言回しとして、ペロンの軍事独裁政権の樹立とエヴァ・ペロンの独善的な福祉政策に、いちいち突っ込みを入れながら、彼女の若すぎる死に至るまでを歌と踊りでショーアップしている。アンドリュー・ロイド・ウェーバーの楽曲はさすがに聞かせる。しかし、その視点が彼女に対して必要以上に辛辣なので驚くのだ。
 しかし、エヴァを演じる井上智恵はまだ未熟という雰囲気で、もう少し貫禄がほしいところ。夫のペロン大佐はもともと作劇上影が薄く、結局、芝清道が演じるチェが主役という変な構成になっている。チェ・ゲバラの功績こそが本物の社会変革であり、エヴァ・ペロンの志したものなど、所詮成り上がり女の道楽程度のものという厳しすぎる結論に至る。
 カーテンコールの際も、一番最後に最も大きな喝采を浴びるのは、チェ役の芝清道で、実際この濃厚なオッサン、実にカッコいいのだ。

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