PARA ENTRAR A VIVIR
2006 ヴィスタサイズ 66分
DVD
新居を求めて古いマンションの下見にやってきた若夫婦は、突如豹変した不動産会社の女に監禁されてしまう・・・
スパニッシュ・ホラー・プロジェクトの一編だが、本作は明らかに脚本の練り方が弱く、ジャウマ・バラゲロの辣腕をしても凡作の域に止まってしまった。サスペンスの醸成と荒廃した世界観の映像表現はさすがにジャウマ・バラゲロの独壇場だが、ラストの決着の付けかたは芸が足りない。
キャメラはパブロ・ロッソが担当し、ヒロインが車中で寝ている間に、どことも知れぬ郊外の寂れた工業地帯のような光景が雨に煙る情景に急転する導入の演出を支え、本編の怪物の心象風景ともなるマンション内部の荒れ寂れた雰囲気の描出に尽力している。女怪物がマネキン人形に自分の着ていた雨合羽を着せてヒロインたちを騙すというありきたりな場面でさえ、スーパーナチュラルな存在感を醸し出すキャメラワークは素晴らしい。
「ネイムレス 無名恐怖」「ダークネス」に連なるジャウマ・バラゲロ流の家庭崩壊劇だが、６６分という中篇映画という枷もあり、彼の持ち味が十分に発揮されているとは言い難い。
