機械じかけの小児病棟 ★★★

FRAGILE
2005 スコープサイズ 102分
DVD


 イギリスの小島の閉鎖間近の病院、入院中の子供を襲った謎の骨折事件に恐れを抱いた看護師が辞めた後、アメリカから後任の看護師(キャリスタ・フロックハート)が赴任する。シャーロットという空想の友達と話をする少女マギーと親しくなるが、院内では開かずの階となっている2階を中心に怪異現象が発生し、前任者は怪死を遂げていることが判明する・・・

 「ネイムレス 無名恐怖」は未見だが、「ダークネス」で鋭いところを見せたジャウマ・バラゲロの最新作。スペイン映画だが、イギリスロケで、アメリカ人女優を使った世界展開を狙った作品。ただし、製作費は明らかに少なめで、テレビ用映画規模。

 今回の狙いは恐怖描写よりも、死者をめぐるファンタジーにあり、「ダークネス」のような硬派な怪奇映画を期待すると肩透かしかもしれないが、後半のひねり具合はさすがに俊才ジャウマ・バラゲロだけのことはある。しかも、「ダークネス」ではちょっと無理やりなところがあったが、今回は自然なタッチで、意外な方向へ物語を導いてゆく。恐怖映画というよりは、ジェントル・ゴースト・ストーリーに近い味わいがある佳作である。

 死期が近づくとあの世のものが見えてくるとか、死者は思いの残る場所にとどまるのではなく、愛するものの傍に居るといった、この映画を統制するルールが、後半に印象的な演出で明かされ、その後は一気呵成にサスペンスと怪奇と感動の釣瓶うちに突入する。医療ミスで子供を死なせた看護師の贖罪の物語というありきたりな設定が、ラストで美しい奇跡に結実する手際の良さには感動する。


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