ネイムレス 無名恐怖 ★★★

LOS SIN NOMBRE
1999 ヴィスタサイズ 102分
DVD


ネイムレス 無名恐怖 [DVD]

ネイムレス 無名恐怖 [DVD]

 何ものかに殺されたはずの娘から、「私生きてるの。助けて」との電話を受けた母親は、事件を担当した元刑事の協力で、元ナチスの科学者を協力者として結成されたネイムレスという邪教集団が事件の背後に関与していることが浮かび上がる。二人は教祖の居る刑務所に向かう・・・
 怪奇映画の俊才ジャウマ・バラゲロの長編デビュー作。ラムジー・キャンベル原作の小説の映画化で、「羊たちの沈黙」を意識したサイコ・ホラー風サスペンスだが、スペイン映画らしい落ち着いた演出としっとりと落ち着いた、しかし寒々しい画調が秀逸な逸品。
 ただし、せっかく興味を煽っておきながら、終末の展開は肩透かしで、傑作とは呼びがたい。ネイムレスという邪教集団の成り立ちをナチスと収容所の残虐性にまで言及しながら、邪悪な哲学を披瀝するあたりは大いに興味深く、有意義な掘り下げかたなのだが、正直なところ、ラストで起こる事件など、日常の三面記事レベルの反倫理性しか含まれておらず、”純粋な悪”というモチーフの具現化としては如何にも弱い。日々現実に起こる家庭内事件が人々に及ぼす打撃の大きさに完全に打ち負けている。これは原作の弱点なのかもしれないが、せっかくジャウマ・バラゲロの演出力とシャビ・ヒメネスキャメラの見事なアンサンブルを堪能させておいて、この程度の結末では、竜頭蛇尾というものだ。

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