ダイアナがパリで客死するや、王室を離れた彼女に弔意を示そうとしないエリザベス女王に対する国民のバッシングが激化する。王室の権威失墜を危惧したブレア首相は具体的な提案を示し助け舟を出そうとするが、女王はあくまで頑なで・・・
エリザベス女王とダイアナの確執を隠そうとせず、前提条件として、マスコミに扇動された国民に、英国人らしく冷静に弔意を示すことを願いながら、王室の権威を守るために、首相の提案を受諾せざるを得なかったエリザベス女王のある一週間を丁寧に描ききった政治劇且つ家庭劇の佳作。正直、予想以上に面白く、まさに大人のための映画である。
エリザベス女王と新任の年若い首相のブレアの間の関係に焦点を絞った脚本がなかなか傑作で、実にドラマらしいドラマを堪能させてくれる。「太陽」も悪くはないが、昭和天皇のドラマもこんな闊達な調子でドラマ化してほしいものだ。英国の象徴としての威厳を守る重責を意識する女王の孤独と、女王の政治的な利用も辞さない若い首相が次第に女王の覚悟の凄さに気づいてゆき、心の底から賞賛するに至る後半のドラマ的カタルシスは作劇の王道を観た思いだ。ヘレン・ミレンの演技だけではなく、作劇の妙を堪能できる正統派の劇映画で、大人の観客にとってはまたとないご馳走だ。