剣鬼 ★★★

剣鬼
1965 スコープサイズ 83分
DVD
原作■柴田錬三郎 脚本■星川清司
撮影■牧浦地志 照明■山下礼二郎
美術■下石坂成典 音楽■鏑木創
監督■三隅研次


 犬っ児と蔑まれる下級武士(市川雷蔵)は花作りと俊足の才能を見出され、狂人の主君の温存を願う城代一派に暗殺者として使役され、公儀お庭番や反対派の藩士たちを斬る。ところが政権交代により後ろ盾を失った後は、新主君の仇討ち禁止令を無視した遺族たちに襲撃され、「これは私事の暗殺だ!」と叫ぶ。 

 三隅研次の超絶技巧が発揮された異色時代劇だが、何度見ても後半部分の構成が弱い。五味龍太郎との決闘などまさにとってつけたような唐突さだし、姿美千代のヒロインに集約してゆくラストも、配役の弱さが映画全体の足を引っ張っている。

 ただ、特に内田朝雄と雷蔵の絡む場面はすべて傑作といって間違いない研ぎ澄まされた真剣のような凛冽さを発している。居合いの技を伝授される山中の場面など、狭いセットでありながら、ホリゾントにより無限遠を構成し、ロケとも見紛う見事な照明と撮影の技巧を見せる。後の内田朝雄暗殺場面では法然寺の砂盛を模した様式的な庭を生かした皮肉な再開が描き出され、名シーンとなっている。照明は名人山下礼二郎。

 さらに、餞視される主人公を演ずる雷蔵の表情が傑作「炎上」での修行僧を思い起こさせる眼の演技で群を抜いており、この世とあの世を等しく眼中に宿らせたような不思議な眼の輝きを湛えている。逆光のなかに彼の表情を捉えた牧浦地志のキャメラが冴え渡る。

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