キネマの天地
1986 ヴィスタサイズ 135分
DVD
脚本■井上ひさし、山田太一、山田洋次、朝間義隆
撮影■高羽哲夫 照明■青木好文
美術■出川三男 音楽■山本正純
監督■山田洋次
旅役者の娘が映画館の売り子から松竹蒲田の大部屋女優となり、駆け落ちした看板女優のピンチヒッターとして大抜擢され、主役デビューするまでを、松竹蒲田撮影所から大船撮影所へのバトンタッチとも絡めながら描き出した、大船撮影所50周年記念映画。
今見ると、有森也美よりも中井貴一がいい。共産党細胞と疑われて警察に拷問され、右目がお岩さんのように異様に腫れ上がった姿は、86年製作にもかかわらず特殊メイクの専門家に委託していないらしく、コントのようなメイクが哀れ。
ポッと出で映画女優になった娘の身を案じる渥美清が随所に演技の見せ場を貰って、さすがに巧い役者ぶりを発揮するし、映画館で息絶えるラストの倍賞千恵子、吉岡秀隆と並んだカットは、別に寅さんシリーズのファンでもないのに、グッと来るものがある。特別出演の松本幸四郎(九代目)が城戸所長を軽快に演じて映画の雰囲気をカラッと明るくするのに成功しているし、冒頭とラストに登場してほとんど台詞も無い藤山寛美も、ただそれだけでありがたい気がするのは関西人の性か。
しかし、この映画、今の山田洋次と長沼六男のコンビなら、デジタル合成もふんだんに使いこなして、もっと質感の高い映像表現ができたことだろう。