あゝ同期の桜 ★★★

あゝ同期の桜
1967 スコープサイズ 107分
DVD
脚本■須崎勝弥中島貞夫
撮影■赤塚滋 照明■金子凱美
美術■鈴木孝俊 音楽■鏑木創 合成■松木春吉
監督■中島貞夫


 毎日新聞社刊の海軍飛行予備学生十四期会編『あゝ同期の桜・帰らざる青春の手記』を原作とした東映戦記映画三部作の第一作。学徒出陣した予備士官たちが、太平洋戦争末期の時代にそれぞれの青春を完結させる様を、中島貞夫らしい(?)シニカルな視点で描き出す異色作。

 本来製作者が意図したのは、第二作以降の木下忠司が音楽を担当して叙情的な戦記映画だと思われるのだが、シリーズ初作の本作は、おそらく中島貞夫が自ら脚本に手を加えて、戦争に翻弄されたそれぞれの青春を皮肉なエピソードに仕立て上げてゆく。

 自分が戦争に行けば日本の文化が50年遅れるぞと豪語する青年は軍隊を脱走して軍法会議にかけられ、その後軍内で苛めにあって精神を破壊される。日本に勝ち目は無いと冷静に分析する村井国夫は、それでも祖国にために特攻も辞せずの意志を固めた途端、呆気なく米軍の爆撃で落命する。基地を破壊された彼らは、戦死した同期の桜たちに対し、河原で野辺の送りをするしかない。そうした無念の青年像を群像劇として提示する作劇は、東映ならではの下からの視線で描かれた戦争像を明確に打ち出している。ラストで、米艦船に零戦が激突せんとする記録映像に「この時、まだ彼らは生きていた」とテロップで大書する中島貞夫の姿勢は、後の笠原和夫の怨念を呼び寄せる露払いの役割を果たしたのかもしれない。

 練習機の墜落や、零戦の出撃、空襲を受ける基地などの場面にミニチュア撮影も行われており、特撮スタッフが編成されたはずだが、合成の松木春吉(テレビ映画『仮面の忍者 赤影』の特撮(多分合成撮影)を担当したあのおじさん!)のみクレジットされている。飛行機の撮影は硬直しているが、基地爆破のミニチュア撮影は正攻法で見ごたえがある。スクリーン・プロセスは見苦しいが、ところどころに移動マスクを使用したと思しいクリアな合成カットがあり、それなりに力を入れていたらしい。

参考


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