ゼロ・ファイター 大空戦 ★★★

ゼロ・ファイター 大空戦
1966 スコープサイズ 92分
DVD
脚本■関沢新一 斯波一絵
撮影■山田一夫 照明■大野晨一
美術■北猛夫 音楽■佐藤勝
特技監督円谷英二
監督■森谷司郎


 なぜかピカピカの中古DVDを1,500円で売っていたので、ついつい購入してしまった1作。

 関沢新一の脚本は岡本喜八の独立愚連隊シリーズと同様にシーンとシーンを軽妙に繋いでテンポを上げる作法で、監督デビューの森谷司郎も、ダイナミックかつ軽妙な職人芸を披露する。この人、晩年の作風からは信じられないが、実に器用な監督なのだ。田中友幸としては、本当は岡本喜八にこうした特撮戦記映画を撮ってほしかったのだろう。多分、この映画もベテラン監督が何らかの事情で投げ出した企画のお鉢が森谷司郎に回ってきたのではないだろうか。

 加山雄三佐藤允のコンビがいつものように快調で、今回は整備班長谷幹一が設け役だ。報国岡山号というオンボロ零戦の脚本上の小道具の使い方が巧妙で、クライマックスを盛り上げる。ドライな作風はいいのだが、残念ながらラストが呆気なさすぎて、脚本が意図していた感銘には至っていないのが、この映画がいまいち注目を集めない原因だろう。

 山本五十六の撃墜シーン(「連合艦隊司令長官山本五十六」では、より精度をあげてカラーで再現される)から始まる、円谷英二の特撮は、大型のミニチュアを使用したカットは素晴らしい質感だが、シーンによってはピントも怪しいカットがあり、撮りきり特撮の厳しさが偲ばれる。ピントが怪しいのは、主にゴンドラによる移動撮影のようだ。零戦映画の特撮としては川北紘一の「大空のサムライ」がベストだろう。

 さらに、このDVDがお買い得なのは、「川北紘一の飛行機はこう撮れ!」という特典映像が収録されているところで、川北紘一が、本作や、自身の担当作品のスナップ写真を示しながら、撮影技法について解説するというマニアックな内容。リアルな空気感を追求するあまり、ラジコン機を使ったロケ撮影に時間をかけすぎるので、制作部から頼むからステージで撮ってくれと泣きつかれたエピソードなど、川北紘一の面目躍如というところ。特典映像の演出は満留浩昌で、撮影は桜井景一、ドリーム・プラネット・ジャパンの制作だ。
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