ドラマ・コンプレックス「ウィルスパニック2006夏 街は感染した」

【最終更新】2021/3/23

 いかにも2時間ドラマらしいベタなタイトルに騙されてはいけません。なんと、篠田節子の疫病パニック小説「夏の災厄」のドラマ化なのです。

 演出はテレビドラマ欄でよく見かける割にあまり興味のわかない下村優、撮影はなぜか「逆境ナイン」の村埜茂樹ですが、とにかく低予算なので、今時のテレビドラマなら映画並みの照明やキャメラワーク、カラーコレクションで作りこんだ映像を見せるところですが、あくまでストレートに予算の乏しさを隠そうとしない映像設計とカット割で、ゆるいテレビドラマの好見本といったスタイル。

 ところが、宇山圭子という脚本家はかなり本気で、極限状態のなかで差別意識をむき出しにする住民の姿を提示し、ウィルスの発生源と疑われた養豚場の息子は差別に反抗しながらも豚舎に放火して自殺するというシリアス且つ機微な展開を用意して単なるテレフィーチャーと一線を画す意気込みを見せる。

 ラストも低予算らしくこじんまりと解決するのだが、新型脳炎ウィルスの特効薬開発に志願した事件関係者のうち、副作用で1名死亡とさりげなく字幕で示したり、事件の発生を伝えて住民を励ましていたラジオのDJが新型脳炎で死んでいたことをさりげなく明かしたり、人の死の切実さと微妙な距離感をリアルに表現して、意外な怖さを醸し出す。

 女子中高生ターゲットのぬる〜い、幼稚な恋愛ドラマ全盛のテレビドラマ界ですが、突然こんな異色作が飛び出すから目が離せません。

参考



以下の日本テレビの「ドラマコンプレックス」のサイトに詳細なストーリーなどの情報が残されていますよ。これは助かるなあ。👉今は消えてしまいました。
http://www.ntv.co.jp/d-complex/contents/20060627_m.htmlwww.ntv.co.jp

「テレビドラマデータベース」では詳細なストーリーが記載されています。
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-39188

これが原作小説。いまや評価の定まった傑作小説ですよ。

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