■小説のドラマ化ではなく、ドラマ化のために小説を依頼したというABC創立65周年記念スペシャルドラマ用のメディアミックス企画だが、脚本が青木研次で監督が瀧本智行なのでハズレのはずがないわけで、期待通りの重厚な刑事ドラマ。撮影が芦澤明子で、異様に暗い画を撮っており、テレビドラマの枠を超えた、完全に映画仕様。
■テーマは貧困と人身売買で、現代の「飢餓海峡」を目指したという北海道の暗部を抉る犯罪に、しっかりとリアリティと説得力を持たせているのがとにかく立派。北海道ロケも力が入っているし、過去のストリップ小屋の回想シーンはなんと16ミリフィルム撮影だという。
■トリックがどうこうというお話ではなく、ある意味で一本調子の推理劇なのだが、落ち着いた演出と演技陣の力演でぐいぐい見せる。特に塩見三省は病み上がりの痛々しく痩せた姿で鬼気迫る演技を見せて圧巻。このキャラクターの台詞がこのドラマの悲劇の肝を一言で言い当てる。凄かった。そして緑魔子の登場!
■たぶん瀧本智行以下のスタッフは『薄氷の殺人』をイメージして撮影したに違いないね。敢えて老け役の沢村一樹が無駄にカッコいいのも見どころ。