才女気質 ★★★

才女気質
1959 スコープサイズ 87分
高槻セントラル 
企画:大塚和 原作■田口竹男 脚本■新藤兼人
撮影■山崎善弘 照明■森 年男
美術■千葉一彦 音楽■黛 敏郎
監督■中平 康


 京都の表具屋の女房(轟夕起子)は頼りない旦那(大坂志郎)を助けて一家の切り盛りに奔走する才女だ。だが息子(長門裕之)や娘(中原早苗)は彼女の思惑を外れて、自分たちで人生航路の舵を切ろうとして衝突する。長男の七回忌の席で、久々に一家が一堂に会するが・・・

 中平康の全盛期に撮影された京都モノ映画。新藤兼人の脚本はいつものように無駄の無い引き締まったもので、それを快調なキビキビしたテンポでカッティングすると90分を切ってしまうのだ。日本映画の全盛期ならではの充実感に溢れている。

 ちゃんと京都ロケも敢行され、木屋町南座近辺の昭和34年当時の風景が非常に興味深い。今になると資料映像としても価値があるだろう。京都モノの映画としては、関西風のまったりとした風情よりも、才女の計算ずくの才気煥発ぶりに主眼がおかれていたり、関西風の俳優が出演していないこともあり違和感があるのだが、そこが逆にユニークな個性ともなっている。まあ、当時京都に撮影所を持っていない日活のことだから、浪花千栄子中村鴈治郎などのザ・関西といった役者は起用できなかったのだろうが。

 そのかわり、主役の轟夕起子の芸達者ぶりが遺憾なく発揮されて圧巻だし、義母役の老け役を演じる細川ちか子がまた傑作。脇役ながら見事なツッコミで場をさらってしまう儲け役。長門裕之の許婚を演じるのが新人表記のある吉行和子で、別人のようなおぼこさ。

 大映映画や東京映画などに比べると京都の室内描写の照明に陰影が無いのだが、京都の老舗の計算高いカラッとした一面に着目した異色作といえる。京都の撮影所が描く京都とは視点が異なるのだ。
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