ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!★★★★

WALLACE & GROMIT THE CURSE OF THE WERE-RABBIT
2005 ヴィスタサイズ 85分
MOVIX京都(SC8) 


 巨大野菜コンテストを目前にウサギの食害に悩まされた町民はウォレスとグルミットに助けを求め、新兵器ウサギ吸引マシンで一掃するが、その頃から街では謎の巨大ウサギが出没するようになる。その謎を追うグルミットは意外な真相を突き止める・・・
 おなじみの粘土アニメの初長編。監督はニック・パークとスティーブ・ボックスの共同で万全を期している。「チキンラン」も確かに凄かったが、やっとウォレスとグルミットの長編デビューに接することの出来た幸福感は何ものにも替えがたい。期待を裏切らない傑作である。
 原題が”ウサギ男の呪い”というだけあって、狼男映画のパロディとなっている点がミソで、怪奇映画的な趣向も満載で、最後にはキングコングまで援用して、初長編の完成を寿ぐのだ。クライマックスにはいかにもニック・パーク的な細かいアイディアがテンコ盛りで、さすがに楽しいが、中盤のグルミットと謎の怪物の追跡劇の場面が傑作で、「ペンギンに気をつけろ!」のラストに迫る出来だ。
 今回はある事情により、グルミットの大活躍が中心となって物語が展開するので、観客はみんなグルミットの大ファンになってしまうだろう。
 さらに、今回の新キャラクターであるウサギの大群のキャラクターも抜群の可愛さで、ことにウサギ吸引機に吸い取られて宇宙遊泳のように宙を舞う様子は絶品。エンドクレジットに登場するもの頷けるキャッチーなキャラクターだ。
 粘土アニメというジャンルには、食傷気味のCGアニメにはまだ無い、指に感じる質感と確かなミニチュア感覚が生き残っており、その最良の美質が、究極の完成度で展開されているのだから、世界的な至宝といっても過言ではない映画である。アカデミー賞長編アニメ賞で「ハウルの動く城」などと比較するのは、この映画に対して失礼というものである。
 欽ちゃんの吹き替えは癖がありすぎるので、字幕版がお奨めだが、上映劇場が少ないのが残念だ。

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