わんぱく王子の大蛇退治 ★★★★

わんぱく王子の大蛇退治
1963 スコープサイズ 85分
DVD
脚本■池田一朗、飯島敬
原画監督■森康二
音楽■伊福部昭
監督■芹川有吾

■なんというか、ひたすら楽しく心躍る漫画映画。伊福部昭の映画音楽としても最高レベルで、音楽を聴くだけでも血沸き肉躍る傑作だが、そこは映画音楽なので、コンサートで聞くよりも映画で映像と一緒に味わうのが、もちろんベスト。東映アニメ映画は、しょうじきあまり観ていないのだが、本作ではシンプルなデザインのキャラクターが、いきいきと躍動する様は、アニメの根源的な魅力をよく教えてくれる。

■キャラクターでは、アカハナの可愛らしいしぐさがいじらしいし、終幕で大活躍する天早駒の天かける走りの健気さと力強さの表現は出色。当然、一言も喋らないのだが、ちゃんと性格が表現されているから、凄いアニメートだ。怪魚アクルとの戦いで、スサノオの足が高速バタ足で突っ込むシーンも、シンプルな表現ながら傑作。

■母イザナミを喪った、まだ死を理解できないスサノオが母が赴いた黄泉の国を目指して旅に出るお話だが、兄ツクヨミも姉アマテラスも、妙に冷淡な性格というのが奇妙な感覚で、さすがに”すまじきものは神様業”といったやるせなさを感じさせるのも奥深い。アマテラスなんて、完全に世間知らずの気位の高い扱いにくいおばさんというキャラで、まあ実際そんなもんだろうが、逆に言えば、日本の神様はなんて人間臭いんだという話。それでも、天早駒を遣わしてやるあたりが憎い姉さんなのだが。

■ちなみに、スサノオをの声を演じるのは子役時代の風間杜夫。芸風は全く違うし、声質も全く異なるが、なにしろ凄い芸歴。



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