舞姫
1951 スタンダードサイズ
BS2録画
冷淡な夫(山村聡)と20年来の恋人(二本柳寛)の間で揺れ続けるヒロイン(高峰三枝子)の姿に、戦争による日本の変質をダブらせながら描いた文芸メロドラマ。
脚本が新藤兼人で、主演が高峰三枝子ということもあり、東宝映画というよりも松竹映画的なメロドラマ世界が繰り広げられる。ちょっと「安城家の舞踏会」なども思い出してしまうのも無理はないといえるだろう。
山村聡の屈折した人物造形が面白く、ヒロインにしつこく付きまとう成金の見明凡太郎は設け役だが、岡田茉莉子などは後年の「夫婦」のなどのほうがコケティッシュな魅力がよく出ているだ。
母娘がバレエダンサーという設定なので、バレエの公演がしっかりと描写されるのも成瀬には珍しい趣向だろう。
個人的には、旬を過ぎた高峰三枝子という女優には、「山の音」の上原謙のような爬虫類的な冷たさを演じさせたほうが似合うだろうと思われる。正直言って、こうしたヒロインを高峰三枝子に演じられても、感情移入が困難なのだ。
岡田茉莉子が思いを寄せるバレエの先生がヘンリー大川こと大川平八郎というのも、ツボだ。