黒田騒動 ★★★

黒田騒動
1956 スタンダードサイズ
BS2録画

原作■北条秀司 脚本■高岩 肇
撮影■吉田貞次 照明■中山治雄
美術■鈴木孝俊 音楽■小杉太一郎
監督■内田吐夢


 上昇志向の強い若輩者(南原伸二)を重用して、幕府の禁制を破る藩主忠之の行いに幕府による改易の危機を感じ取った家老の大膳(片岡千恵蔵)は、度々箴言するが聞き入れられず、却って切腹を命じられ、死中に活を求めて藩主に謀反の兆しありと幕府に訴え出るが・・・
 有名な黒田騒動に取材した内田吐夢の重厚な政治ドラマだが、「逆襲獄門砦」のような突出した情念の迸りは見られず、藩の改易を回避するため先の先まで読んだうえで幕府によるトップダウンの判断を誘導しようとする大膳の策略が沈んだ押し殺したタッチで描かれるところに一種の凄みがある。
 ただ、それで映画的に面白いかといえば、構成としては破綻している「逆襲獄門砦」のほうが優位に立つことは間違いないだろう。例えば橋本忍が脚本を書いていれば、もっと通俗的に面白い映画になった可能性がある。実際、橋本忍は「加賀騒動」も書いており、こちらは政治ドラマとメロドラマが見事に融合した佳作である。
 幕府は大膳の進言を採り、黒田藩をキリシタン勢力の防波堤とすべく取り潰しを思いとどまるのだが、このあたりの図式は、日本を反共の防波堤として位置づけるために天皇制を利用しようとしたGHQおよび宮中グループの戦後工作と奇妙に重なり合っており、それが内田吐夢の寓意だったのかどうか、興味深いところだ。