『裸の十九才』

基本情報

裸の十九才
1970/CS
(2004/10/29 レンタルDVD)
オリジナル・シナリオ/新藤兼人、松田昭三、関巧
撮影/黒田清巳 照明/岡本健一
美術/春木章 音楽/林光、小山恭弘
監督/新藤兼人

感想(旧HPより転載)

 連続射殺魔永山則夫の事件をモチーフにしたドキュメンタルな劇映画で、北海道で生まれて極貧に育ち、中学を卒業後に東北から集団就職で上京し、職を転々とするうちに弾みで起こした殺人事件でタガが外れてゆく様子を現在と過去の時制を行き来しながら描き出してゆく力作。黒田清巳のモノクロ、シネスコの硬派な画調が秀逸で、陰影に富んだセット撮影に厚みがあると思ったら照明は岡本健一なのだった。

 新藤兼人は「狼」やこの作品のように突き放した視点から物語るとき、強烈に硬派な資質を発揮するようで、ここでは母親乙羽信子のエピソードが湿っぽくなりがちだが、辛うじて抑制が効いている。ただ意味無く登場する乙羽のセミヌードが観客にとっては迷惑なのだが。ほんとに勘弁してくださいよ。

 乙羽と夫婦を演じる草野大悟が台詞は少ないながらも独特の存在感を示し、清水紘治は出ているが、岸田森は出ていない。その代わりというか、渡辺文雄戸浦六宏佐藤慶小松方正といった創造社グループが期待通りのあくどい活躍を見せ、70年代の青春を赤裸々な姿を刻み込んでいる。この顔ぶれが揃うだけである時代の青春の姿が形作られてしまうというのは凄いことだ。

 主演を演じる原田大二郎にとっては生涯の代表作で、長髪で長躯の70年代の青年像を今に伝えている。作為を廃したエピソードの羅列で痛々しい青春の姿を率直に描き出した新藤兼人のアプローチは今日観ても古びていない。「帰ってきたウルトラマン」で団次郎が新時代のヒーローとして颯爽と登場する前年のことなのであった。

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