『ごめん』

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基本情報

ごめん
2002/VV
(2004/7/3 レンタルV)
原作/ひこ・田中 脚本/山田耕大
撮影/上野彰吾  照明/上妻敏厚
美術/三浦伸一  音楽/大友良英
監督/冨樫 森

感想(旧HPより転載)

 精通を迎えた大阪の小学生(久野雅弘)が祖父母の住む京都である日出逢った少女(櫻谷由貴花)に一目ぼれし、愛と性に一気に目覚めるが、少女は実は中学生だった。複雑な家庭環境で育った少女は少年の必死の告白をつれない返事を返すのだが、やはり少年は諦めきれず、大阪から京都を目指して自転車を飛ばすのだった。

 相米慎二の助監督出身の冨樫森が、よみうりテレビと組んで送る「お引越し」「夏の庭」に続く児童文学路線だが、師匠の良い所を引き継ぎ、師匠の歪なところを素直な感性で補って、師匠を超える青春映画の傑作を撮りあげた。

 師匠の諸作に比べると明らかに低予算で、ほとんどロケとロケセットで撮られた映画だが、上野彰吾のキャメラが圧倒的に素晴らしく、大阪、京都(上賀茂)のありふれた風景を劇的な空間に変容させてゆく。師匠譲りの長廻しも強引な力技ではなく、カット割りも滑らかで、淀みが無い。海遊館近辺での長廻しのカットなどキャメラワークも照明(といってもほとんど自然光だが)の設計も完璧で、80年代の日本映画の躍動感が蘇ったような錯覚を覚えるほどだ。

 物語は「小さな恋のメロディ」そのものだが、櫻谷由貴花の美少女ぶりと久野雅弘のおとぼけぶりの対比が素晴らしく、精通という、男にとってはある種の痛々しさすら感じさせる題材を扱いながら突き抜けたラストの叙情に結実する感情の流れは清々しく、監督の力量の確かさを見せつける。

 ただ残念なのは、こうした傑作が関西地区ですらほとんど話題にもならずにひっそりと公開されただけという興行体制の弱さで、日本映画の観客の素質の底上げを図るためには、こうした誰にでも訴求する映画らしい映画を広く流通させることが必須なのに、せっかくシネコンブームでスクリーン数が増えているにもかかわらず、こうした映画を積極的にプロモートしていこうというポリシーが見られないことだ。

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