『地獄花』

基本情報

地獄花(1957)
原作・室生犀星 潤色・円地文子
脚本・伊藤大輔
撮影・中川芳久 照明・中岡源権
美術・西岡善信 音楽・伊福部昭
監督・伊藤大輔

感想(旧HPより転載)

 山に住む盗賊達の首領(香川良介)に拾われて娘兼妻として仕える野生の娘(京マチ子)は盗賊仲間(山村聰)に襲われてその舌を噛みきって殺してしまう。しかし、その時に赤子を身籠もったため、山を追われる。だが、無口な流れ者(鶴田浩二)に庇護された彼女の子育てが首領の知るところとなり、嫉妬に駆られた追撃が始まる。

 大映初のビスタビジョン方式の映画で、西の宮川、東の中川と並び賞された中川芳久が流麗なキャメラワークを見せる。今回のプリントは黄色く褪色したものだが、ニュープリントで観れば、もう少しは綺麗なはずだろう。首領の粗末な館の内部の照明効果や山中での芝居場となる野面のセットの立て込みも入念で、特に当時のカラー映画としては、かなり困難であったはずの室内の暗部を生かした映像設計は「女と海賊」の宮川一夫よりもはるかに意欲的で、その完成度も高いことに驚く。

 しかし、京マチ子の変貌を描くはずの物語はかなり低調で、なぜか彼女とその赤子を庇護する流れ者の描き方も中途半端で一体何を考えている人物なのかよくわからないという有り様で、伊藤大輔自身にやる気があったのかどうかも疑わしい。京マチこの演技も凡庸で、全く生彩がない。

 資料によると盗賊の首領が柳永二郎となっているのだが、実際は香川良介が演じており、急遽代役をたてたものだろう。昔の映画ではこういうことがよくあったらしい。

ちなみに、この映画での子守歌の曲が「疵千両」にそのまま流用されているのだが、映画的な効果としては「疵千両」のほうに分がある。
(2000/11/8 ビスタサイズ BS2録画)

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