あては矢島商店の総領娘だっせ!船場の大店の遺産相続を巡るドロドロ愛憎劇『女系家族』

基本情報

女系家族 ★★★
1963 スコープサイズ 111分 @アマプラ
企画:土井逸雄、財前定生 脚本:依田義賢 撮影:宮川一夫 照明:中岡源権 美術:内藤昭 音楽:斎藤一郎 監督:三隅研次

感想

船場の老舗矢島商店の当主嘉蔵が死去すると、巨額の遺産相続を巡って美人三姉妹が対立する。なかでも出戻りの総領娘である長女(京マチ子)は気位が高く、激しく自己主張を繰り返す。大番頭の宇市(中村鴈治郎)が遺言執行を取り仕切るが、なにやら一物ありそうで、胡散臭い。さらに、隠し妾文乃(若尾文子)の存在が明らかになり。。。

山崎豊子の新聞連載小説をさっそく映画化した大映京都製作の文芸映画。スタッフは大映京都撮影所の一級技術者を揃えたが、なぜか配役はこじんまりしているところが、いかにも大映東映ならまずオールスターで固めるところだが、大映の場合は美術セットや技術コストが優先的に予算措置される。そもそも美人三姉妹が、京マチ子はいいとして、次女がなぜ鳳八千代なのか?三女が高田美和というのは、新人売出中なのでしかたないけど、あまりパッとしない。(個人的な趣味の問題です)

■なにしろ山崎豊子の定評ある船場ものなのでドラマ的にはみどころ満載で、メリハリの効いたドラマティックな、というかえげつないお話と人間関係が展開するので面白いのは間違いない。でも先に見た『女の勲章』に比べると見劣りする。以前にも一度観ているのだが、意外と印象に残っていないのは、その地味さによる。世界的名手である宮川一夫キャメラは、多分カラーの発色をラボ処理で抑えており、映像のルックからして地味。『女の勲章』のアグファの渋いけど独特のゴージャスなコクのある発色に比べると、どうも見劣りする。

■地味といえば三隅研次の演出も地味で、お話の見せ場としてはケレンに欠かないのだが、こうした文芸映画と相性が良いとは思えない。もっとメロメロしたメロドラマのほうが実は相性がいい気がする。実は田中徳三あたりのほうがフィットするのじゃないかと思うけどね。さらに脇で暗躍する中村鴈治郎北林谷栄のアクの強いコンビも面白いんだけど、地味だなあ。

京マチ子の踊りの師匠で不動産には詳しいから、遺産相続で損しないように協力しまっせと、こちらも腹に一物含んで助力するのが田宮二郎だけど、こちらはわりと小さい役どころで、『女の勲章』のような派手な大活躍はないのも、寂しい。とにかくスタッフみんなが大映京都らしく地味好みなんですよ!音楽が斎藤一郎というのも印象を地味にしていて、例によって華のない曲調で文芸映画というニュアンスではない。これも個人的な好みの問題ですけどね。でも、林光とか池野成とか山内正だと、イメージは相当違ったよね。

■ただ劇的な見せ場としては実に秀逸で、役者はみな上手い。特に本家を訪問した若尾文子に対してえげつない挑発の仕方で、妊娠の事実を暴く浪花千栄子の舌鋒の鋭さと怖さは、まるで恐怖映画。この場面は文句なしの傑作で、役者冥利に尽きる見せ場だろう。でもこんな怖いオバサン、昔はいましたよね。。。

■三姉妹が医者と一緒に若尾文子の家に押しかけてホントに妊娠しているのか診断させるろと迫るえげつない場面も凄くて、医師が母体の診断中なのに部屋に乱入する場面も一種の恐怖映画ですね。でも、遺産相続となると、誰しもこんなことをやりかねないところがあるのは知っているので笑えず、震えるわけです。嫌なもの見せますよね。山崎豊子だから。

■最終的な逆転劇もドラマとしてはもちろん万全なんだけど、それ以前の浪花千栄子の見せ場なんかが先鋭だったので、なんだか尻すぼみ感は否めず、そもそも矢島商店に番頭から入り婿として当主に就任して、家業のために自分を殺して地味に生き抜いた(と思われていた)目立たぬ父親嘉蔵の、女系家族に対する念入りな反逆のドラマという構図が、原作小説ほど明確に打ち出されず、古い船場の伝統に固執する総領娘が戦後という時代の変化に順応するところに集約するのは、ドラマの焦点を見えにくくしている気がする。ほんとは『犬神家の一族』みたいなお話なんだよね。

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