ブレーキ・ダウン

ブレーキ・ダウン
(BREAKDOWN)

感想(旧HPより転載)

 ドライブ中のちょっとした油断からトラック運転手に妻を誘拐された男(カート・ラッセル)が見知らぬ田舎町で妻の行方を求めて孤軍奮闘するサスペンス。

 スピルバーグの「激突」に似ているが、不条理な恐怖を目指したものでなく、あくまでアメリカの片田舎には現実に存在しそうな邪悪な陰謀が明らかになる。それは「悪魔のいけにえ」のレザーフェイス一家の陰惨さを持ち込もうとしたかのようだ。おそらく、原案兼監督のジョナサン・モストウの頭には「激突」+「悪魔のいけにえ」というプランが閃いたのだろう。ただし、ホラーではなく、サスペンスとしての商品化を狙って、犯人側の造形は単純化されているのだが。

 シチュエーションの簡潔さは買えるものの、サスペンスとしての作劇は案外素朴で、ラストのカーチェイスにしても、ミミ・レダーの「ピースメーカー」あるいはサム・ライミの「XYZマーダーズ」に似た橋からの墜落のサスペンスを帯びたスペクタクルについても、今さらの感がある。

 なにしろ、主人公がカート・ラッセルだから、何が起きようが鋼の肉体と腕力で何とか打開してしまいそうな不用意な安堵感を醸し出し、却ってサスペンスを弱体化している。制作者がアクション映画ではなく、サスペンスとして考えているのであれば、ミスキャストと言わねばならない。

 いや逆にカート・ラッセルのキャスティングによってアクション映画として明確に宣言しようとしたのかもしれない。サスペンスで始まり、アクション映画に至る、それが作劇の狙いだったのだな。

(98/9/15 V スタンダードサイズ)

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