吉永小百合の転機となった代表作!確かに良かった、NHKドラマ人間模様『夢千代日記』

1981 夢千代日記(全5話) ★★★★
原作、脚本:早坂暁、音楽:武満徹、演出:深町幸男、松本美彦

吉永小百合のキャリアで大きな転機となった代表作がNHKドラマ人間模様『夢千代日記』ですね。でも、なぜか今まで観る機会がなかった。本放送のときは、いまさら(?)吉永小百合なんてなあ、と舐めていたので、観ていない。

■はじめて観ると、さすがに見どころが多く、というのも懐旧的な意味が大きいけど、まずは出演者がやたらと豪華なので驚く。吉永小百合のほかにも、秋吉久美子林隆三樹木希林加藤治子岡田裕介佐々木すみ江、片桐夕子、緑魔子あがた森魚(!)、伊佐山ひろ子ケーシー高峰中条静夫長門勇と、昭和世代には応えられない濃ゆい面々。主演級が何人もいるわけです。ゲストも村瀬幸子、田島令子(キレイ!)、草薙幸二郎、丹古母鬼馬二と、胸焼けしそうです。

■「裏日本」の温泉街で芸者の置屋をやっている夢千代は、自身も体内被曝で余命三年といわれているし、抱えている芸者たちもそれぞれ訳アリの曲者ばかり。でも、買収の誘いも断って独立独歩で生きていこうと懸命に足掻く。

■その運命共同体を「道連れ」と呼んだところが秀逸で、さすがにこの時期の早坂暁は冴えている。人生の敗残者ばかりが肩を寄せあって、それでも日陰の人生を懸命に生きようとする仲間。それは日々の戦いの記録でもある。川崎から元芸者の殺人者を追ってきた刑事すら、血を吐いて倒れて、警察を辞めると、もっと早くここに来ればよかったと呟く。

樹木希林はTBSドラマのアドリブ演技の延長線上で、完全にその路線を続けている。まさに樹木希林ひとり劇場。緑魔子あがた森魚の伴奏でストリップを始めるし、実際に初回ではかなり脱いでるし、60年代、70年代のカオスなアングラムードが、まだ生き残っている。すでに1980年代に入っているけど、「裏日本」なので、時差があるのだ。最終回で樹木希林緑魔子のストリップショーを観て、芸の力に勇気づけられる場面など、ホントに感動するから、凄いよ。あと、中村久美のお披露目で、馴染の狭いスナックで緑魔子あがた森魚がお祝いに歌を披露する場面も、妙に感動的でしんみりするなあ。。。

■死ぬ気で余部鉄橋から飛び込もうとする北村総一朗が、まったく同じことをしかけている秋吉久美子と目が合う出逢いの場面なども早坂暁の筆が冴える名場面で、目を見張りました。岡田裕介と組んだ東映映画の迷作(全部ではないよ!)ではおおいに評価を下げてしまった早坂の本領発揮は、やはりテレビドラマにあったのだ。

■ちなみに「裏日本」という呼称は、すでに70年代に差別語の語感を伴っていたといわれるけど、本作では普通に使われている。そもそも「裏」という語には差別感情はなかったという説もあり、このあたりの経緯については誰か研究してくれないかなあ。でも「人生の裏街道」なんて言葉もあり、やはり日陰の恵まれない感覚が付き纏っている子はする。でもこれも時代によって差別的な意味が後で付与された経緯があるのかもしれないなあ。

© 1998-2024 まり☆こうじ