ネタバレ多め!オカルト映画の佳作『リーピング』を邪推してみた

基本情報

The Reaping ★★★
2007 スコープサイズ 99分 @DVD

感想

■南部の町ヘイブンで川が赤く染まる。出エジプト記の10の災いか?信仰を捨てた女科学者が科学的に解明しようとするが、町外れに悪魔崇拝者と疑われた少女がいて。。。

■だいぶん前に一度だけ観ているけど、お話の詳細を忘れていたので、再見。確かによくできたお話でした。旧約聖書の10の災いは神の仕業なのか、悪魔の仕業なのか。少女は悪魔の化身なのか?図と地が逆転するクライマックスは、さすがに捻りが効いて、痛快なほど。

■ただ、それまでの展開があまりすっきりしないのが残念で、スーダンで難民支援活動中、旱魃に逆上した原住民に夫と娘を生贄にされてしまうという悲劇も、その残酷さも編集がガチャガチャしていまいち焦点を結ばない。ダークキャッスル製作なので、あまり意味のないショックシーンを盛り込むのだが、かえってサスペンスを削いでいる気がする。

■でもよく考えると、キャサリンと元同僚の神父との関係性にどうしても違和感が残る。単にスーダンで一緒に働いただけの関係で悪魔の前兆が現れるだろうか?これもともとは、彼はキャサリンの夫で、スーダンでは娘だけが死んで、信仰を捨てたキャサリンと別れたという設定じゃないか?自然に考えればそうなると思うんだけど。

■さらに違和感があるのは、キャサリンがヘイブンの町で知りあって間もない教師ガイと簡単に寝てしまうこと。キャサリンは夫と娘を虐殺された寡婦なので、こんなに尻軽だと観客は違和感しか感じないはず。いや実際そう。この不自然さはラストのオチのアイディアのために逆算して伏線を作ることが必要だったから、後で無理やり押し込んだのではないか思われる。そして、このアイディアを活かすためには、夫も死んだことにする必要があり、神父は単なる同僚に格下げされることになったのではないか。元夫の神父と頻繁にやりとりしているのに、一方でほとんど行きずりの男と寝ていたんでは観客の反感を招くだろうから。

■そして、このラストのアイディアのせいで、本来の結末が棄却されてしまったのではないか。本来なら、あれだけの奇跡を見せられて神の実在を思い知ったキャサリンは失った信仰を取り戻すはずだよね。本当はそこに着地するはずだったのに、最後にもう一捻り欲張ったために、構成が歪になってしまった。というのが、個人的な邪推なんだけど、いい線いっている気がするなあ。

■しかし、かなり入り組んだ設定で、逆さの鎌がキリスト以前からの悪魔崇拝のシンボルというのはいいとして、初子はその印を刻印され、それ以外は思春期に悪魔の生贄にされると。でも思春期を無事に過ぎた第2子は、初子を排除して代わって悪魔の化身となる??なんだかわかったような腑に落ちない設定だなあ。神父が言うんだけど、結局あの神父の当て推量は外れだったからね。部屋の中で本だけ読んで生半可な知識を振り回すより、フィールドで実際に見聞きして体験的に把握したほうがより真実に近づくことができる、という教訓話かな?

参考



maricozy.hatenablog.jp
南部ゴシック映画としては、なんといっても『スケルトン・キー』がオススメ。
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新しいところでは、『ジェサベル』なんて佳作もあります。知る人ぞ知る良作。
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『去年夏突然に』て、ほとんど怪奇映画ですがな。
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