『許永中 日本の闇を背負い続けた男 』

許永中 日本の闇を背負い続けた男 (講談社+α文庫)

許永中 日本の闇を背負い続けた男 (講談社+α文庫)

■『同和と銀行』というどえらい仕事を成し遂げた森功の、これも力作ドキュメントだが、結局のところ許永中という人間の人間像が十分に浮かび上がったとはいえない気がするのだなあ。登場人物は多岐にわたり、特に大林宣彦の映画の出資にも関わっていたことは驚きだった。竹下登だけでなく、亀井静香許永中と深く結びついていたことはよくわかった。
■中津の朝鮮人スラムから暴力と奸智と度胸とアングラ経済界での巧みな人脈作りでのし上がり、バブル期に100億円単位の資金を右から左に動かしていたという怪人物の錬金術の謎も深いし、その人間性にも深い謎が残されたままという気がする。
■そういうあたりは、本来なら東映が映画化してわかりやすく解きほぐしてくれるべき素材なのだが。今は、古き良き昭和懐旧ブームだが、あと何年かしたら、単なる回顧ではなく、昭和の謎解明ブームがやってきて、こうした素材も俎上に乗ることになるのではと夢想するのだが。

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